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『写真美術館にようこそ』を読んだ

『写真美術館にようこそ』という本を読んだ。
この本は写真鑑賞をどのように楽しむかという本である。だいぶ面白かった。
写真の歴史という時間軸と被写体の違い(人物、ヌード、モノ、風景、都市、出来事など)という、いわば空間的な広がりの軸を設定し、今までの写真家の様々な試みや作品を、それらの軸にそって分類・説明してくれる。なので、この本を読むと、今までは単なるいろんな写真の集合という一つのかたまりであったものが、構造化され、体系化された集合として見えてくる(ような気がする)。

また、いろいろおもしろいことを述べている部分もあった。
例えば、ダイアン・アーバスという写真家の作品を取り上げて次のように説明する。

彼女は巨人、小人、両性具有者のようないわゆる”畸型者たち”や衣装倒錯者、ヌーディスト、狂信的愛国者といった社会的規範からやや逸脱した「特殊」な人たちを被写体に選ぶことが多い。ところが彼らの写真を見ているうちに、われわれはそこに人間という存在の純粋な原型というか、いわばもう一人の自分自身の姿を見出してしまうのです。「特殊」と「普遍」が、一枚の写真の中に奇妙にねじれた形で共存している。(67-68ページ)



これを読むまでは、見世物小屋なんて、ひどいもんさと思っていたが、たしかに、この著者の言ってることにも一理あるかなと思ってしまった。畸形者が出てくるから、倫理上の問題とかが絡んできて、なんとなく判断をくもらせてしまうんだけど、実は、違う例をあげたら、同意する人も多いと思う。例えば、学問の世界では、なにかの事象の本質を導き出すときには、さまざまな事象を比較して、それらの事象が持っている共通項を抽出するのが一つの上手いやり方だ。で、その様々な事象には、もちろん極端な例というのを入れたほうが、その事象のより普遍的な本質を導き出せることになる。ということは、多くの人が同意すると思う。ならば、現代においては目を背けたくなるような畸形者たちの写真によって、人間の本質を見出せるのかもしれない。もちろん、これらの写真をそのように見る人は稀であろうし、昔の見世物小屋なども、もっと卑俗な好奇心や優越感を満たすためだけに足を運んだという人が大半だったと思う。それでも、この「特殊」と「普遍」が隣り合わせになっているという指摘には、どこか惹かれるものを感じた。

あと、もう一つ気に入ったフレーズがあったので引用しておきたい。

・・・写真を撮影するということ自体が、モノを日常の文脈から切り離して別の場所に「転移」する行為であるといえます。(113ページ)



写真を撮るという行為は、日常の文脈から切り離すということだ、ということに、我々は自覚的であるべきだと思う。特に他者に影響を与えてしまうフォトジャーナリストや人類学者は肝に銘じておくべきことだろう。

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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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