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ニューヨーク万博

ポートランドのThe Oregon Historical Societyという博物館でCenturies of Progressというイベントをしている(期間は2010年2月3日まで)。本とかで知ってはいたが、当時の資料を見ていると、技術・進歩・大量消費社会などの、ばら色の未来に絶対的な信頼を寄せていた当時のアメリカの状況を知ることができる。特に興味深かったのが1939年に開かれたニューヨーク万博である。アメリカの社会学や経済学、近代史を勉強している人たちには常識なのだろうが、俺はこのあたりのことをまったく知らなかったので、とても面白かった。万博というと先端技術の陳列と思っていたのだが、ニューヨーク万博は大衆の生活が中心的テーマだったらしい。機械化や大衆消費社会、中流階級に郊外住宅地やハイウエイなどアメリカ的生活様式がこのあたりから始まったということを初めて知った。そんな感じでニューヨーク万博に興味が出てきたので、ネットでちょっと調べてみたら、面白い記事を発見。

三浦展さんのニューヨーク万博という記事だ。

三浦展さんといえば『ファスト風土化する日本』とか『下流社会』とかを書いている人だ。どちらも本屋で題名を見たぐらいで、ちゃんと読んでいないのでよく知らないが、まあ、社会分析とかが得意なのかな?と思っている。とりあえず、この記事は面白かった。この中で面白い記述をいくつか抜粋してみる。

 リデルは書く。「大恐慌時代における博覧会の中心的なテーマは、未来のユートピアに向けてのアメリカ国家の進歩であった」。しかしその進歩という言葉が強調する意味は次第に変化し、「ついに進歩は、消費者の購買力の増大を意味するようになった。万博のスポンサー企業は国民に対して、倹約や自制という古い価値観を捨てて、アメリカの工場や企業の作り出す製品を買う消費者になれ、と説得したのである」(Rydell,2000)。
 だから、言ってみれば、シカゴ万博が1833年から1933年までの100年を「生産の世紀」と位 置づけたとすれば、
ニューヨーク万博は、1939年から2039年までの100年を「消費の世紀」として祝福しようとしたと言えるであろう。



「勝利の歌を歌う、この男女の行進は、明日の世界の真のシンボル。もし、何百万人もの、何億人もの人々が、行進し、働き、共に歌うことができないなら、明日の世界は実現しない。牧師も、農民も、炭坑夫も、主婦も、砂取り人も、野球選手も、電話交換手も、大臣も、乳搾り人も、綿つみ人も、車掌も、看護婦も、世界中のあらゆる男女が、腕を組み、勝利の行進をする。彼らは混沌を乗り越えて勝利した。彼らは明日の世界を建設したのだ」(Rydell,1993 & Zim,Lerner and Rolfes,1988)
 この演出は社会主義的ですらある。しかしこれこそがアメリカン・ウエイ・オブ・ライフというユートピアの高らかな宣言だったのだ。すべての人々、すべての職業、すべての階級が相互に助け合いながら、ヨーロッパの暗黒の、混沌とした階級社会を乗り越え、アメリカン・ウエイ・オブ・ライフを実現する、それがニューヨーク万博の思想であった。
 公式ガイドブックでも労働者への視点は忘れられていない。パビリオンを設計したデザイナーだけでなく、実際にパビリオンの建設に携わった無数の無名の労働者たちに祝福を!とガイドブックは書いている。紙の上に書かれたデザイナーの夢は仮の姿に過ぎない。夢を現実に変えるのは技能者や労働者だ。フラッシングメドウの荒れ地を、この歴史上最も偉大な博覧会の会場に変えたのは彼らだ。そう言ってガイドブックは労働者たちを褒め称えた。労働者が社会の真の主役であり、そうであればこそ彼らが消費者となってアメリカン・ウエイ・オブ・ライフを担うことに意味があるのだ。



消費社会をユートピアと考える思想は、消費する人間を理想化する。上述したように、1930年代の万博は、より多くを消費することが進歩であるという価値観に貫かれていた。



ウエスティングハウス社は有名なリンド夫妻の社会学研究『ミドルタウン』(1929年刊)にヒントを得て、インディアナからニューヨーク万博を見に来たミドルタウンの家族ミドルトン一家を主人公にした映画「ミドルトン一家 万博に行く」
(The Middleton Family at the1939 World's Fair)を製作した。これも、この博覧会にとって、そして企業にとって、消費する家族というものが非常に重視されていたことを物語る事実である。


このようにニューヨーク万博が示したユートピアは、一面では、19世紀以来の社会改良主義の流れを汲みつつ、機械を支配下に置いた労働者が豊富な消費財に囲まれた消費者となり、緑豊かな田園都市の中でモダンな生活をおくるというものであったが、他方では、1930年代の迫り来る世界大戦という状況の中で、愛国主義や優生学と強く結びつきながら、ファシズムとコミュニズムの脅威に対抗するためにつくられた、アメリカニズムという強固なイデオロギーだったのである。


という感じで、まあ、ようするに、面白いところがたくさんありすぎて全部引用しても意味がないし、まとめるのも面倒なので、時間があったら自分で全部読んでみてください(笑)。ただ俺が特に興味を持ったのは、この万博で、消費社会というユートピアが語られたこと、そしてマルクス主義では革命を起こすとされていた労働者階級を、消費者として社会に取り込もうとしたところだ。マルクスとは違った意味で、搾取されていた労働者階級という社会の矛盾を(一時的とはいえ)解消してしまったのだから、すごいとしかいいようがない。そしてその歪みが現代の社会問題に繋がっているのかもしれないところも興味深い。

このマルクス主義と資本主義の違いについては、面白い映像がある。それが、この記事でも紹介されている、『ミドルトン一家 ニューヨーク万博に行く』というドラマだ。13日の金曜日パート8の『ジェイソンニューヨークに行く』は知っていたが、ミドルトン一家は知らなかった。でも見てみるとミドルトン一家も面白いじゃん。見てない人はユーチューブで見れます。



字幕が無いのがつらいけど、結構面白い。なおユーチューブに行けば続きもちゃんと見れます。で、この映像を見ていて、とても面白かったというか、資本主義万歳みたいなミドルトン一家を見ていると強烈だなーって思ってしまう。というか、サザエさん並の、能天気なミドルトン一家に、こっちが赤面してしまいそうになってしまったのだが、それ以上にマルクス主義がなぜそうなるみたいな疑問が出てくる。機械化によって失業することを危惧するだけがマルクス主義ではないのだが(汗)。なんか似たようなメンタリティーは未だにアメリカにあるような気がする。金儲けと技術革新だけにプライオリティーを置く人たちね。というか、そういう輩は、アメリカ人に限ったことではなくて、もちろん日本にもわんさかいるわけだが。。。まあ、こういうイデオロギーが始まったのがニューヨーク万博だってのは面白いなって思う。

ミドルトン一家で、もう一つおもしろいのは、象徴画を説明しているマルクス主義者のお姉さんの今彼と、彼女の父親との会話の部分。父親に言わせると、何を描いているのかわからないような絵よりも具体的な物体を描いた絵の方がいいという。このあたり、抽象論よりも具体的モデルや手に取れる物体に価値をおく物質主義という側面を強調しているように思う。

まあ、そんな感じで、作り笑顔が絶えないミドルトン一家が登場するドラマ『ミドルトン一家ニューヨークへ行く』を見ているといろいろ発見があって面白い。ついでにニューヨーク万博で提唱された様々なメッセージやアメリカ的生活様式などをもっと詳しく調べてみたいと思ったわけです。


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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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