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オタク学入門を読んで

俺は映画を見るのが好きだった。

昔はレンタルビデオ屋に行って、片っ端から借りてきては見ていた。

特にホラー映画が好きで、近所のレンタルビデオ店のホラー映画はほとんど見てしまった。

ホラー映画が好きといっても、スプラッターや痛い系などは、あまり好きではないので、見ない作品ももちろんあった。

それでも、パッケージは確認し、とりあえず知らないホラーは無いというぐらいにはなっていたつもりだ。

少なくとも、周りには俺以上にホラー映画を知っている人は見たことがなかった。

だから自称ホラー映画オタクを気取っていた。

しかし、岡田斗司夫さんが書いているオタク学入門を読んで、俺のプライドはずたずたに引き裂かれた。この程度でオタクを名乗るなど、おこがましかった。岡田さんによると、俺は単なるホラー映画マニアであってオタクではなかったのだ。

では、オタクの人たちは何が違うのか?岡田さんはあとがきで次のようなことを書いている。

オタクというのは、作品論ではない。何をどう見るか、という視点の問題なのだ。なぜあの作品にオタクは惹かれ、それにはどんな意味があるのか、という史観や人間観なしにはオタクは永遠に理解できない。どんなに数多くの素晴らしいアニメやマンガを見てもダメなのだ。(375-376ページ)



では、具体的にどのような視点が必要なのか?

オタク文化の頂点に立つのは教養ある鑑賞者であり、厳しい批評家であり、パトロンである存在だ。それは作品に美を発見する「粋の眼」と、職人の技巧を評価できる「匠の眼」と、作品の社会的位置を把握する「通の眼」を持っている、究極の「粋人」でなくてはならない。(359ページ)



つまり岡田さんは日本文化とオタク文化の共通性を見ているわけだ。で、面白いのが、江戸時代の文化とつなげようとしていることである。

僕はオタク文化というのは「江戸時代の消費者文化」である職人文化の正統な後継者ではないかと考えている。つまりオタク的な楽しみとは、職人の芸を鑑賞するというスタンスの楽しみ方ではないだろうか。職人の匠を愛でたり、由来を確かめたり、粋を鑑賞したりする。その中で第Ⅳ章で説明した「世界」と「趣向」という決まりに則った作品鑑賞、見立てという抽象化など、日本の古典文化と同じ方向へ進化していったのだ。(363-364ページ)



この点に関しては新しい消費行動ということで、こんど違う文章でもアップしたいと思っているのだが、今回は消費行動ではなく、純粋にオタクの鑑賞の仕方の一端を紹介したい。

例えば、ルパン三世のカリオストロの城のオープニングが、どの程度すごいことなのかを、オタク学入門では9ページもかけて延々と説明している。

このオープニングでは様々な技法が使われているらしい。それも最小限のセルを使い回しして、最大限の効果を生み出しているのが凄いところなのだという。

全部のシーンの解説を書いてもしょうがないので、興味のある人は本を読んでください。

一個だけ例を挙げれば、ルパンの車が坂を上ってきて下りる場面。ここでは「望遠圧縮」という望遠レンズで撮影すると遠近感が失われるという効果を使っているのだという。ただし、この効果が目的だったのではなく、こうすることによってセルの使い回しが可能になり、その結果、制作費の節約になるのだそうだ。つまり遠近感が失われているから、ルパンの車の大きさを変えなくてすむのである。だからお金の節約として、この望遠圧縮というものが採用された。でも、結果的には、この望遠圧縮の効果が真夏の日差しを感じさせる場面にもなっているのだという。

奥が深い。

まあ、こんな感じで5個か6個のオープニング・シーンのからくりをすべて解説してくれる。で、岡田さんの結論としては、この短いオープニングの部分だけで次のような効果を生んでいるのだそうだ。

どのカットも、ほとんど絵の枚数を使っていないのに全然退屈させない。それどころか、旅の孤独感や人に頼らないルパンたちのダンディズムが伝わってくる。どのカットでも、彼らは常に二人だけだ。周りに人がいても、常にすれ違うだけ。それが余計に彼らの孤独感や、異国の地へ来たという感じを盛り上げている。(212ページ)



まだ、この文章を読んでからカリオストロを見ていないのでなんともいえないが、本の欄外のカットの絵を見て記憶を辿っていくと、確かにルパンたちの孤独感は伝わってきていたかもしれない。ただそれがどうしてなのかということは、もちろん今まで考えても見なかったことだが。

ということで、このルパンのオープニングシーンの説明は鳥肌立つくらい興奮した。
今すぐにでもオープニングを見たいと思わされる。
おそらく、オタク学入門を書いている岡田さんの説明が凄いのだろうが、それに加えて、カリオストロの製作者の凄さ+映画のこだわりがすごいのだろう。
さらに、そういう見方ができるオタクたちの楽しみ方もまた驚嘆に値する。

このような話を聞かされると、確かに俺のしてきたことは、単なるマニアの楽しみとしかいいようがない。ただ数をこなすだけではだめなのだ。知識を増やしても、オタク的な楽しみ方ができているわけではないんだ。これからは、アニメや映画を見るとき、もっと様々な視点から作品を楽しまなくてはいけないのだと考えさせられたわけである。



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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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