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映画『アバター』に見る女性像

 映画『アバター』にはシガニー・ウィーバーが出ている。シガニー・ウィーバーといえば、『エイリアン』シリーズや『愛は霧のかなたに』でアメリカのフェミニズムの発展に大きく貢献した女優だと思う。『エイリアン』では戦う女性リプリーを演じ、当時の西洋人フェミニストが大喜びするような「強い女性像」というものを表現してきた。『愛は霧のかなたに』は、アフリカのジャングルに滞在しゴリラを長年野外調査していた実在する人類学者の実話にもとづく映画なのだが、研究に半生を捧げた女性人類学者の役をシガニー・ウィーバーが演じている。この女性人類学者も、男などに頼らず、家庭というものを持たず、ゴリラ研究という仕事だけに没頭する、いわゆる精神的に強い自立した女性像が表現されてきたと思う。もちろんシガニー・ウィーバーは他にもいろいろな映画に出ている。さっきウィキペディアで調べていて気がついたのだが、『ゴーストバスターズ2』にも出ていたみたいだが、昔、見たときはまったく気が付かなかった。というか当時は白人はみんな同じ顔に見えたからね。ちなみに、俺は1999年に作られたSFコメディー『ギャラクシー・クエスト』が大好きなのだが、この映画にもシガニー・ウィーバーが登場し、ある意味大活躍をする。『ギャラクシー・クエスト』は本当におすすめなのだが、まあそこらへんを延々と書いていくと話がどんどんずれていってしまうのでやめておこう。とりあえず、ウィキペディアを見る限り、すべての映画でシガニー・ウィーバーが強い女性を演じていたわけではない。ただ、それでも80年代の、特に冒頭であげた『エイリアン』シリーズと『愛は霧のかなたに』はフェミニズム運動に大きく貢献したと思う。まあ、そういうわけで、シガニー・ウィーバー=フェミニズムというわけではないのだが、それでも、彼女が出てくると、『エイリアン』世代の俺としては、彼女の存在にやはり強い女性みたいのを感じるし、フィルムの中に潜むフェミニズム的メッセージ性とか探してしまうわけだ。ということで、今日は『アバター』に見られる女性像を探ってみたい。

 『アバター』に現れる主要女性キャラは、ナヴィの狩猟部族の族長の娘で主人公の恋人になるネイティリ、ネイティリの母親で「エイワ」の神託を伝える巫女のモアト、海兵隊パイロットでアバター計画の人員やアバターの輸送を担当するトゥルーディ・チャコン、そしてシガニー・ウィーバーが演じるアバター計画を率いる植物学者のグレイス博士の4人である。

 ネイティリは弓矢の扱いに長けていて、馬(のような動物)や竜(のような鳥)も巧みに乗りこなす。映画を通して、彼女は自立した女性として気高く生きているように見える。少なくとも男に媚びたり頼ったりすることはない。また獰猛な動物や敵に勇敢に立ち向かっていく姿から勇敢な戦士という設定が伺われる。おもしろいことにナヴィでは戦士層が男だけなのかどうかということははっきりしていない。ナヴィのモデルとなったアメリカ先住民社会では、女性戦士などというものはないはずだし、映画を見る限りナヴィでもネイティリ以外の女性キャラは戦士ではない印象を受ける。そのへんでネイティリが特異な存在であるし、多分に「強い女性」という現代的イデオロギーが感じられる。ただこのネイティリの「強い女性」像はアメリカ的なヒロイン像とは若干異なっている。ここでいうアメリカ的なヒロイン像とは、俺が勝手に想定している2つのタイプなのだが、簡単に言うと「男をまったく必要とせず、男と対等に戦える『エイリアン』のリプリーのような女性」タイプと「通常は一人で生きている強い女性だが、男との恋愛やセックスも楽しむことができる、「トゥームレイダース系のセクシーな女性」タイプのことを指す。俺が見ていて思ったのは、ネイティリはこの二つのヒロインタイプのどちらでもなく、むしろ日本のアニメやゲームに出てくるヒロイン像に近いような気がした。特にあのキスをする直前のシーンの2人のやりとりなどは日本的なヒロイン像に近いのではないだろうか。

 次にネイティリの母であるモアトを見てみよう。彼女は背も若干小さく、戦士としてのネイティリと違い、一見よわよわしい。しかし、最初に主人公のジェイクをナヴィ社会に受け入れると決めたのは彼女だったと思うし、グレイス博士やジェイクの意識をアバターに移す儀礼を行うのもモアトである。表立った活躍はしないものの、重要な案件に関しては的確な判断をし、影から支えるなど、母性的なものが見え隠れしているような気がする。また排他的な男たちに対して、受容する女性的な優しさみたいなものが出ていたような気がする。部族内ではシャーマンとしての役割をもっており、夫であり部族長であるエイチュカンと、若干異なっているとはいえ、同等レベルの発言力を持っている。事実、祭祀儀礼に関しては、彼女が実権を握っている。つまり社会的地位は極めて高い。にもかかわらず、男性的な強さは感じられないのは、先に述べたように、女性的・母性的魅力を持っているからだろうと思う。ちなみに伝統社会によく見られる発言力のある女性というのはモアトのような感じだろう。

 海兵隊の女性パイロットであるトゥルーディ・チャコンは、また違った魅力の女性である。彼女は言葉遣いなどに粗暴さが感じられるが、自分の信念を貫き通す強さを持っており、『アバター』では主人公のジェイクに加勢することになる。このような粗暴だが正しいと思うことや仲間のために命すらかけるという女性は、『エイリアン2』で指揮官と共に爆死する女性海兵隊員を思い出させる。そういえば彼女も南米系の女性だったような気がする。また、チャコンの役を演じるミシェル・ロドリゲスは、映画『バイオハザード』でも、粗暴な態度や言葉遣いだが最後まで主人公をサポートする特殊部隊の女性隊員を演じている。このような一見粗暴だが信念を貫くためには命もかけるという真の強さはニーチェ流に言ったら「英雄」にあたるのではないだろうか。このようなニーチェ的な「正義」を表現したものとしてはアニメ『ブラックラグーン』などにも見られるのだが、日本よりもアメリカの方が、このようなヒロイン像は好まれる傾向にあるような気がする。

 最後にグレイス博士である。彼女は植物学者ということで、とりあえず弱い(笑)。あのリプリーを演じたシガニー・ウィーバーなので、突然銃を乱射したり、パワードスーツに乗り込んだりしても不思議でないし、あの「大佐」と死闘を演じられる人物は彼女しかいないと思っていたのだが、さすがにそういう展開は無理だったらしい。それにしても、彼女は弱い。弱いといっても、喧嘩に弱いというだけであって、人間的に弱いわけではない。男に頼っているというような弱さではないし、映画を見ている限り、彼女は一人で研究してきたという強さはにじみ出ているのである。ある意味『愛は霧のかなたに』の人類学者のような強さである。ただ『愛は霧のかなたに』の人類学者よりも、人間的なそして女性的な優しさが備わっているように思う。

 このように見てくると、『アバター』においては、4つの女性像が表現されていたように思う。そのどれもが興味深いのであるが、ただ単に強い女性というのではなく、むしろ優しさや恥じらいなどを備えた女性像だったように思う。ただ、おもしろいのは、「大佐」と主人公の「ジェイク」は極端に強いが、この二人を除外すると、男の人類学者やアバターを開発した科学者、また採掘会社から派遣されてきた採掘場の責任者など、他の男性キャラは結構弱いイメージで描かれているような気がする。彼ら男性キャラクターは女性キャラほど活躍していない。女性キャラはモアトなど戦いに参加していないとしても、キープレイヤーとして物語に深くかかわっている。『アバター』は戦いの物語なのに、男たちの活躍よりも、彼女たち主体的な女性が未来を切り開いていくという話の展開になっているのは興味深い。


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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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