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『「萌え」の起源』を読んで

PHP新書から出ている『「萌え」の起源』という本を読んだ。
著者は小説家・脚本家でアニメや漫画から時代劇や邦画・演劇に詳しい。
つまり大衆文化に関して造詣が深い人である。

内容が大衆文化ということもあって、この本は非常に読みやすい。
ただし、アニメや漫画などよりも、むしろ70年代頃までの時代劇などの芸能の記述が多いため、我々の世代からみるとすこし難しいかもしれない。
それでも、そのような昔の大衆文化を比較材料として出すことによって、戦前から連綿と受け継がれてきた日本的な感性が、手塚治虫によって漫画の世界にも導入され、今に至っているという、筆者の主張が説得力を増すのである。

では、日本的な感性とはどのようなものだったのか。
本書の最後にまとめとして書かれているので、抜粋してみる。

・ 日本人は本来、生命と無生命を区別しない文化を持っている。

・ 日本人は「小さくて丸っこくてカワイイもの」に愛着を感じる。

・ 日本のヒーローは他人のために、自分を捨てて、見返りを求めずに戦うことで存在意義を見出している。

・ 日本人の理想とする正義とは、敵を否定し殲滅することではなく、みんなで幸福になるために互いに知恵と力を合わせることである。

・ これら日本古来の感性と文化が手塚治虫の出現によって拡大され、マンガ・アニメをはじめとする戦後のサブカルチャーに受け継がれた。

・ それは日本独自のものでありながら、言語や思想や文化の壁を越えて世界に受け入れられる普遍性を持っている(らしい)。



本書の後半は日本のヒーロー像や日本人の考える「正義」などを、時代劇や任侠映画などから考察しているのだが、前半のヒロイン像という部分が一番面白かったような気がする。

筆者によると、日本では「女剣劇」と呼ばれる、男装の美女が活躍する大衆文化が戦前の昭和初期から昭和40年代にかけて上演されていたらしい。
また70年代には「女必殺拳」などの、女性アクションスター主演の映画が、すでに多数作られていたようだ。

一方、アメリカではどうだろうか?
確か、アメリカでは70年代後半に作られたエイリアンが強い女性像を描いた映画の草分けではないかと思う。
それに、本格的に強い女性というイメージが定着してきたのは、おそらく90年代後半移行だろう。マトリックスやスピード、トゥームレイダース、ターミネーター2、バイオハザードなどである。
つまり、ハリウッドなどよりもずっと早く日本では強い女性というイメージが受け入れられていたということは非常に興味深い。

また、現在のアメリカでは女性と男性はすべてにおいて対等であるべきだとして、時には男性のポジションを女性で入れ替え可能だと考える思想が強いように思われる。つまり男女の差を限りなくゼロに近づけようとする考えである。このため、強い女性は女性性を消失してしまっているように見える。エイリアンのリプリーは男に媚びずに一人で生きていくという雰囲気を醸し出している。

一方、日本では、女性と男性は異なっているということを強調しているような気がする。たとえば、最近のアニメでは戦う女性キャラも女性性を捨てていない。むしろそれを強調しているようにさえ感じる。

さらに「からくりの君」という短編アニメに見られるように、男と女は助け合うべきだという考えが日本では強いように思う。このアニメは、無敵のからくり人形を操るお姫様が、あだ討ちをするという話であるが、このお姫様は人形を動かしたら確かに無敵だ。しかし、人形を操っている間、実は本人は無防備状態になってしまうため、誰かに守ってもらわないといけない。そこで、下忍の男に頼むという筋書きである。

つまり男と女は、元来、得手不得手が異なるのだから、一人で戦うよりも、協力して共に戦う存在だという教えてくれている。ここで大事なことはお姫様が弱いわけでも、下忍の男が弱いわけでもない。もともと、違う場面で強いのである。

このような状況では、争う必要はなくなってしまう。常に争っていなくてはいけないというアメリカ的な思想こそ単純でありナンセンスでもある。なお、同じような考えはフェミニズム論争が盛んだった80年代、「超時空要塞マクロス」で、すでに主張されていた。

このように日本のヒロイン像は興味深い。その変遷を知るために、本書の簡単な戦後の大衆文化の歴史はとても役に立つと思われる。


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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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