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「美の巨人たち」の岡本太郎特集が面白かった

 先日、テレビ東京で「美の巨人たち」という番組をやっていた。岡本太郎特集だったのでボーっと見ていたら結構白かった。芸術に疎い私は、もちろん絵画などはほとんど理解できていないのだが、岡本太郎には少しだけ興味を持っていた。といっても最近興味を持ち始めただけで、ちょっと前までは岡本太郎のイメージといったら子供の頃にテレビで何度か見た「芸術は爆発だー!」とか言って笑いをとっている岡本の姿だけだったのだが。そういうことで、数年前までは、岡本太郎については風変わりの芸術家というイメージしか持っていなかった。芸術家なんて普通の人とは違っていないといけないから、風変わりなのも当たり前だと勝手に納得していて、それ以上、岡本太郎に関して興味を抱くこともなく生きてきたわけだが、数年前、人類学の勉強をしていたときに、岡本太郎は実はパリであの有名なマルセル・モースに師事して人類学を学んでいたのだという話を聞いて、俄然、彼に興味が沸いてきた。デュルケームの甥であるマルセル・モースは「贈与論」を書いたことでも有名な人で、人類学だけでなく思想界にも大きな影響を及ぼした人だ。私の好きな経済人類学もモースの影響が強い。そういうことで、モースという人と話したというだけでも卒倒ものなのに、その人に教わったんだから並みの人類学者など太刀打ちできないだろうと思うのだが、そこまですごいのに人類学などに転向せずに芸術家としての人生を貫いたところがすごい。そういうことで、とにかくすごい人だと感心して、それから岡本太郎に興味を持つようになったのだ。

 まあ、そうは言っても、岡本太郎の言葉や絵画に接する時間はなかったので、唯一知っている彼の作品と言えば大阪万博の「太陽の塔」ぐらいだったのだが。しかも、この「太陽の塔」も「21世紀少年」という映画で初めてその存在を知ったわけで(笑)。。。ちなみに「太陽の塔」に関してはその後『踏みはずす美術史』という本を読んでいたら森村泰昌氏が絶賛していた。森村さんによると、「太陽の塔」のすごいところは、時代に流されず、悠久を相手にし、悠久の中にのっそりと立つ風情を醸し出している点なのだという。今度の土曜日の「美の巨人たち」で岡本太郎特集第二弾として「太陽の塔」が取り上げられるので、その感想とともに、森村さんの意見を今度もう少し詳しく紹介したい。

 さて、そういうことで、岡本太郎に関しては、わたしはほとんど何も知らなかった。なので、今回の番組で紹介されていることの内容を吟味することなどできないのだが、とりあえず番組で紹介されていた岡本太郎像というものが結構興味深かったので、そのあたりを簡単にまとめてみたい。私が面白いと思ったのは次の3点だ。一つは岡本が抽象画を選んだ理由。二点目は岡本が絵画によって自分の考えを表現しようとしたこと。そして最後の点は、岡本が芸術を大衆に解放しようとしていたこと。具体的には、絵画でお金を稼ぐようなことはせず、彼の作品は誰もが接することができるようにした点だ。この3点が面白かったので、もう少し詳しく見ていきたい。

 岡本太郎は第一次世界大戦後パリで勉強をし、第二次世界大戦でドイツ軍がパリに攻めてくるまでパリにいたらしい。その間、絵画以外の勉強もしていたらしいのだが、岡本が興味を持ったのは抽象画だったという。その理由は、抽象画なら人種も国籍も超えることができるからだったという。絵画に詳しくない私が何かを言える立場ではないのだが、絵画にも文化や歴史を反映するものと、反映しにくいものがあるというのを聞いて単純に面白いなと思った。抽象画やシュールレアリスム絵画をそういうことを考えながら鑑賞していくと新しい見方ができるのかもしれない。
 
 さて、ドイツ軍が来たので岡本は日本に帰ってきて、そのまま中国戦線に送られたらしい。戦争が終わり、中国の収容所で一年を過ごしたあと、中国から引き上げてきて、また芸術の道を歩み始めた。その頃の日本の美術界は問題(←どういう問題だったと言っていたのか思い出せないが、権威主義的とかそういうことではないかと思う)があったらしく、岡本は日本の絵画の世界を石器時代と痛烈に批判した。と同時に、岡本は、いろいろと先鋭的な作品を発表していったらしいのだが、彼の思想の根底にあったのは、異質なものをぶつけて火花を散らし既存の体制を変革する「対極主義」と呼ばれる考えだったという。これによってマンネリ化していた状況を打開していったらしい。

 岡本はマルセル・モースに師事していたわけで、普通の思想家よりも思想家だったはずだ。事実、いろいろ発表もしていたらしいし、彼は芸術家であると同時に思想家でもあったわけだけど、それでも自分の考えを表現する手段として絵画や彫刻も利用していたという点が、普通の思想家とは違うところだ。その点が私が面白いと思った二点目だ。というのも、自分の考えを絵画や彫刻で表現できると考える人はあまりいないと思ったからだ。もちろん絵画や芸術作品で自分の考えを伝えるというのは芸術家の表現方法だし、実際「反戦平和」とか「自然と共存」とか「文明批判」といった比較的単純なスローガン的メッセージは映画や漫画にも込められている。しかし、岡本のような思想家レベルの人の考えが果たして絵画で表現できるのかということに関しては疑問を持たざるを得ない。そう思ったのだが、よくよく考えてみると、思想家が自分の考えを厳密に言語化して哲学書のような難解な本を書いたとしても、そんなものはほとんどの人は読めないのだから無いに等しいのかもしれない。へたとすると誰のための思想なのかとなってしまう。しかもいくら厳密な定義の単語を使って曖昧な表現を避けようとしても、思想書や哲学書だって多様な読みを可能にしているわけだし、作者の意図とは別の解釈がなされる可能性も高いだろう。もちろん、そのような多様な解釈の仕方が問題なのではない。思想や哲学で重要なことは答えを得ることではなく、むしろ答えを捜し求める思索の過程にあるからだ。しかし、もし答えを得るためではなく、解釈する過程が大事だというのであれば、芸術作品で自分の思想を表現するということは難解な単語を羅列してほとんど読まれない難解書よりも、ある意味、適した媒体だといえるのかもしれない。

 さて、岡本は絵画や芸術作品が金持ちなど一部の人間達に独占されていることを嫌っていたらしい。つまり商業美術を嫌悪していた。だから彼は自分の絵や作品を売らなかったという。岡本は芸術を大衆に解放しようとしていた。自由な精神の表現を彼は大事にしていたのだ。このあたりにも自分の考えを難解な言葉だけで表現する思想家ではなく、むしろ芸術作品を通して自分の考えを大衆に伝えていく芸術家であり続けた岡本太郎の大衆に対する姿勢が見て取れる。そして、私が興味深いと思ったのは、この無償で自分の考えを表現していくという姿勢だ。なぜならこのような姿勢は最近のネットでは普通に見られるようになってきたからだ。ブログやネットでは自分の考えや知識を惜しげもなく発信・共有する人たちが増えてきている。このような新しい知の共有の仕方は、今後さらに発展していくだろう。岡本はそのような考えをすでに実践していたのだ。これが、このテレビ番組を見ていて、面白いと思った3点目だった。

 もちろん、このような態度は岡本だからできたことなのかもしれない。芸術家だって霞を食べて生きていけるわけでもなく、金持ちの道楽ができる一部の人を除いては、まずは生活費を稼がなくてはいけないだろう。実際、岡本も芸術作品は売らなかったが、原稿料などで収入を得ていたらしい。芸術作品を売ることの是非を巡っては村上隆が岡本の考えとは真逆の態度をとっているように思う。村上は資本主義経済下で芸術活動をどのようにうまくまわしていくかということを考え続けてきた芸術家だ。単純な拝金主義者なのではない。むしろ芸術を大事にするが故に資金面をどうするかという現実的な問題を解決する手段をきちんと考えているのが村上なのだ。つまり、彼は、まずはお金を稼げなくては芸術活動ができないと考える。芸術活動ができないというのは芸術の衰退を意味する。だからこそ、正当な収入を得ることができること、きちんと儲けることのできる芸術活動を目指している。

 私は岡本の考えに賛同したいという気持ちが強いのであるが、それでも村上の現実的な態度を否定できるはずもない。商業活動を切り離して考えがちな思想家や芸術家にとっては、むしろ村上の態度の方が大事なのかもしれない。まあどちらがいいという問題でもないとは思うが、ここで指摘しておきたい点は、これは美術界だけの話ではないということだ。批評活動や言論活動など何かを表現する人たちはすべて同じようなジレンマに陥っていると思う。文章で稼ぐためには本の印税や雑誌の原稿料などに頼らざるをえないが、多くの人たちに自分のメッセージを伝えるのが目的だったら、ネットで無償で発信してしまうほうが効率がいいだろう。しかし、それでは、生きていけない。なかなかに難しい問題だ。


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岡本太郎がすごい


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村上隆の売り込み戦略は次の本で読めます
「アート界における”クール・ジャパン”の戦略的プロデュース法」『日本的想像力の未来』47-63ページ




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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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