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分類するということ パート1

今回は前回のつづきです。

 さて、実は私は考古学者の端くれとして、分類という行為について長いこと考えてきた。考古学の第一歩は分類だ。発掘調査で出てきた遺物を分類することから研究が始まるからだ。しかし、実はこの分類というのは非常に厄介な問題をかかえている。昔は考古学者が勘と経験で分類していた。多くの場合、考古学者同士である程度のコンセンサスが得られていたわけだが、やはり客観的な研究とは言えない部分もあった。だから、もっと客観的、科学的な分類の仕方はないものかということで、例えばクラスター分析や因子分析などの多変量解析を用いて分類する方法などが模索されてきた。

 ここで興味深いのは、多変量解析を使った場合、確かに客観的な結果を得ることができる。もちろん、結果を解釈する時点で研究者の主観が入り込んでしまうわけだが、少なくとも、同じデータさえ入力すれば、同じ計算結果を得ることができる。だから、この結果は客観的・科学的な結果であるといえる。それでは、この計算結果によって得られた分類体系は、勘や経験によって分類されたものよりも、より本質的なのであろうか?つまりより真実に近いものを提供しているのだろうか?実は、ここに問題が生じてくる。真実とは何か?研究者はそもそも何のために分類しているのか?というようなことが問われてくるからだ。今回はこのような話と関連してくるのだが、昨日の最後で言ったとおり、サモア語を学んでいたときに聞いた、r音とl音についての興味深い話を紹介したいと思う。その前にサモアとかポリネシアを知らない人もいると思うので、基礎的な部分をちょっとだけ。

 サモアとは南太平洋に浮かぶ島でフィジーの東隣に位置している。住んでいるのはポリネシア人と呼ばれる人たちだ。ポリネシア人はポリネシアと呼ばれる地域に住んでいる人たちで(←当たり前か)、イースター島、ハワイ、ニュージーランドを三頂点とする三角形の内側に点在する無数の島がポリネシアと呼ばれる地域である。ようするに太平洋のほとんどの海域はポリネシアに含まれる。ちなみに、赤道付近でパプアニューギニアあたりからソロモン諸島やフィジーに至るまでの海域をメラネシアと呼び、メラネシアの北側にあるパラオ、ヤップ、グアムとかマリアナ諸島、カロリン諸島、そしてマーシャル諸島やキリバスまでをミクロネシアとよぶ。最近ではメラネシア人とかミクロネシア人などとカテゴライズしてしまうのは適切ではないと主張する人類学者もいるが、三つの地域を表現するには結構便利な用語なので、いまだに使われることが多い。なお念のために言っておくと「真っ黒ネシア」というものは存在しない。

 ポリネシア人はどっから来たかというと、一夜にして太平洋の下に沈んでしまったムー大陸の生き残りっていう説をとっても別に問題ではないのだが、一般的には南中国とか台湾あたりから移り住んできた人たちの子孫ってことになっているので、私が発掘調査でオリハルコンとかオーパーツを見つけるまでは、一般人向けの説を採用しておいたほうが賢明だろう。それによると数千年まえに南中国とか台湾あたりに住んでいた人たちが島伝いにどんどん移動していき、メラネシアを通って、さらに東に移住して行った。で、フィジーからサモア・トンガに達して一休み。数百年そこらへんの島に滞在していたわけだけど、「やっぱり東に行きたい病」が再発してしまった。幸い彼らは高度な航海術を持っていたので、サモア・トンガからさらに東の島を目指して船出していき、マルケサス諸島などの東ポリネシアの比較的大きくて高い島にたどり着いた。そっからさらに近隣の島に拡散していく。そして、ニュージーランド、ハワイ、イースター島にも拡散していき、少なくとも1000年前までにはほとんどの島への植民が完了したとされている。

 まあ、そういうことで、サモア・トンガあたりの西ポリネシアから東ポリネシアの辺境の島々まで1000年か1500年ぐらいのごく短期間で拡散したわけだ。だから彼らの話すポリネシア語は島ごとにサモア語とかハワイ語などと呼ばれてはいるが、ほとんど同じで、意思の疎通もできるらしい。例えば、ツヴァルでは「こんにちは」は「タロファ」だが、ハワイでは「アロハ」だとかそういう感じ。個人的にはハワイ語とかニュージーランドのマオリ語とかってサモア語とまったく違うような気がするのだが、言語学者が似ているというんだから似ているのだろう。俺とかはサモア語ですらほとんど理解できていないからなんとも言えない。

 さて、そういうことで、島ごとに微妙に違っていても、ほとんど同じ言語を話しているのがポリネシアの人たちなのだが、私がサモア語をちょっとだけ勉強していたときに、面白いことに気がついた。それは何の単語だったかは忘れたが、他の島ではr音で記載されていた語彙がサモア語のテキストではl音で記載されていたのだ。他の島の言語を勉強したことなんてない私が、なんで他の島の語彙を知っていたかというと、実は考古学の報告書とか民族誌を読んでいると嫌でも現地で使われているモノの名前などが文章に挿入されるので、まあ基本的な現地語の単語ぐらいは覚えてしまうことがあるのだ。それで、ある島ではrで表記されている単語が他の島ではlで表記されているので、ポリネシア人は英語圏の人間のようにr音とl音を区別しているもんだと思っていた。そうしたらサモア語を学んでいるときにポリネシア人はr音とl音を区別していないということを知った。

 二つの音を使い分けていないのに、島によって、r音が使われたり、l音が使われたりしているのは、どういうことだろうか。普通に考えれば、島を移動していったポリネシア人たちがr音からl音に、またはl音からr音に変化させたと考えるのが自然だろう。言語学によると音の変化には、ある一定の法則がある。そのような法則を使って、言語の変化や、昔の言葉を復元したりということを言語学者はしていると思うんだけど、まあ詳しいことは知らない。だから、私はそのような法則を理解できているわけではないのだが、ポリネシアでもそういう変化が起こって、r音からl音に、もしくはl音からr音に変化した結果、島によってr音で発音されたり、l音で発音されたりしているのかなと思ったわけだ。

 そんなことを考えて、教授に聞いたわけだが、そのとき教えて貰ったのは、まったく違う答えだった。彼によると、民族誌や報告書にr音やl音が混在しているのは、島によってr音とl音という違う音が使われているのではないという。どの島でも、ポリネシア人はr音とl音を区別することなく使っていたわけだが、それを区別したのはむしろ西洋人のほうだったのではないかというのだ。布教のためにポリネシア地域には多くの宣教師が入っていったわけだが、もともとポリネシア地域には文字はなかった。だから宣教師たちは島民が使う言葉を耳から聞いて現地の単語を記録して、布教のために辞書を作ったり聖書を現地語に訳したりしていったいった。宣教師はr音とl音を区別できる。だから、宣教師がl音だと思ったらlで表記し、r音だと思ったらrで表記していった。つまり宣教師によって、r音と見なされたり、l音と見なされたりしたわけなのだ。

 ここには非常に面白くて重要な事実が隠されていると思う。それはポリネシア語を使っている当事者であるはずのポリネシア人はr音とl音を区別していたわけではないのに、宣教師が勝手に区別したために、r音とl音の区別があったように見えてしまっているということだ。ということで、本当は結論まで書きたかったのだが、眠くなってしまったので、続く。


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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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