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友達関係は人脈なのか?

今、『ウェブ人間論』という本を読んでいる。
これは『ウェブ進化論』を書いた梅田望夫さんと作家の平野啓一郎さんの対談本である。
アマゾンとかのレビューにあるように、内容はウェブ進化論とほとんど同じみたいだ。(まだ第二章までしか読んでいないので、なんともいえないが)。

アマゾンに投稿する人は梅田さんファンが多いのか、平野さんの悪口を書いている人がいた。
ただし、実際には平野さんも面白いことを言っている。
というか、むしろ平野さんの方がおもしろい。
梅田さんはよくも悪くも、思考法がIT関連の人だなっていう感じがした。これはウェブ進化論を読んでたときも感じてたことなのだが。
まあ、ここまで成功した人だから、どん底人生なんて送っちゃっている俺なんかに、とやかく言われる筋合いはないと思うが。
ここで言いたいのは、梅田さんは他の理系の研究者や技術者の人たちと同じように見えるのだ。
簡単に言ってしまえば

科学が一番、進歩が二番、三時のおやつはネット社会

みたいな感じで、近代思想が出まくっちゃってるんだよね。
だから、時々、議論が子供っぽく見えてしまう。
まあ、でも、ウェブ進化論も、いろいろおもしろいことが書いてあったので、嫌いじゃないよ。
だから、梅田さんの評価は置いておく。(好きな人は好きでいればいいだろうし、俺みたいに少し懐疑的に見てもいいだろうし)、
その点は、別に、それでいいのだが、それよりもむしろ、平野さんをもっと評価してもいいんじゃないかというのが、今回、俺が言いたいことなのです。

たとえば、第一章で平野さんは面白いことを言っている。
それは、梅田さんがアメリカ人の友人の息子の話をした場面だ。
その息子さんは、小さいカレッジに行きたいと言ったのだという。
なぜ小さいカレッジがいいかというと、一学年250人ぐらいの小さなカレッジだったら全員と深い友達になれて、社会に出たときに、その友達関係が彼のかけがえのない資産になるからなのだという。
確かに、そういうギブ・アンド・テイクの関係を求める人たちが、成功する人たちなのだろう。
梅田さんはこういう人間関係というものを評価しているように見える。
これに対して、平野さんはこういう功利的な関係に懐疑的な意見を述べている。

僕は、その少年の言いたいことはわかりますけど、ただ「深く友達になれる」というのは、やっぱりアイロニカルに響く気がします。そういうナイーブな、一種の功利主義的な人間観は、若い世代の、とりわけエリート層にはますます広まりつつあるんでしょう。彼らはそのギブ・アンド・テイクなフェアな、理想的な人間関係と思っているのかもしれませんが、アイツと付き合うとこんないいことがある、オレと付き合うとこういう得がある、だから友人でいようという「有益性」が前提とされている友人関係というのは、個人的にはちょっとカンベンしてほしい気がします。(53ページ)


僕にはどうしても、一個の人間の全体がそんなに社会的に「有益」であり得るとは思えない。僕だってその内実は、他人にとって何の役にも立たない部分が大半ではないかと思う。だけど、その役に立たない部分も含めて僕であるし、それを含めて人とコミュニケートし、承認されたいという願望はやっぱりあるんです。
(中略)
現実のコミュニケーションが、そうしてますます、個人の「役に立つ」一面にしか興味を示さなくなって、それ以外の思考や言動、あるいはそうした人そのものを閉め出しつつあるのだとすれば、その無益さにも貴重な意味があると考えるべきだという気がします。(54ページ)



この部分においての二人のやり取りを比較すると、俺は平野さんに同意する。
もちろん、梅田さんもそのあたりはわかっているのだろうけど。。。
ただ最近の社会って本当に短絡的に有益性だけを求めてしまう人が多いような気がする。
アメリカにいたときも、そういう人たちを見かけた。
まあ、これからの社会は、そういう人たちが成功していくんだろうけどね。
でも、そういう人たちが成功する社会って何なんだろうとも思ってしまう。

残念ながら、こういう人脈作りというかギブ・アンド・テイクの人間関係を求める傾向は、ネット社会が広がったことで、加速し始めたのではないだろうか。
人脈が広い人は、それだけ努力して、新しい人を探したり、その人との関係をキープするために、エネルギーを使っているのだから、成功してもいいではないかという意見もあるだろう。確かにそうだ。そういう人たちを非難するのは、俺のひがみ根性のなせる業なのかもしれない。
ただ、平野さんがいうように、そういう功利的な動機で誰かに近づくというのは、少し悲しいものを感じてしまうのは俺だけだろうか?
友達関係とは結果論として助け合う関係になるとしても、最初からギブ・アンド・テイクで近づくのはどうかと思うし、役に立たないと思われたとたんに、関係を解消されるのもつらいだろう。友達が極端に少ない俺だが、そういう友達もどきはいないほうがましだ。

まあ、こんな感じで、ウェブ人間論の平野さんの言うことは結構面白いです。
ウェブ上では梅田さんびいきの人が多いみたいなので、平野さんの擁護を書いてみました。
近いうちに、この本を読み終えて、気分が乗っていたら、この本のレビューを書きます。

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私は、保守主義のコミュニタリアンです。文化相対主義を追求するなら、すべての文化を尊重する保守主義しかないと信じています。ただリベラルと保守はある程度両立する概念だと思っているので、基本的にはリベラルでもあります。なので、自分としては中道右派ぐらいのつもりです。日本が好きです。時々右よりの発言をします。でも危ない人間ではありません。構造主義が好きなのですが、ポストモダンも好きです。あとマルクスも好きです。

専門は考古学です。地理情報システム(GIS)や統計学、空間分析、文化人類学(特に宗教人類学と経済人類学)、社会思想、進化考古学、景観考古学、人文地理学、数理生物、行動生態学などを勉強してきました。CRMや少数民族の文化復興運動についてもいろいろと考えています。最近はサブカルチャー特にオタク文化に興味があります。経済学は大の苦手です。

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